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人間の記憶は、覚えて忘れることができます。

何度も使う情報は自然と覚え、使わない情報は風化して消えていきます。

 

今回紹介するのは、そんな人間の記憶能力を模倣した世界初の技術です。

 

シナプス素子

物質・材料研究機構」は、人間の脳のように”必要な情報を記憶”し、”不要な情報を忘却”する素子「シナプス素子」を開発しました。

 

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今回発明したシナプス素子の学習過程の様子

特長

どんな働きをするの?

脳のなかの神経細胞をくっつける”シナプス”のような働きをすることで、人間の”記憶動作を模倣”することができます。

 

具体的には、手を加えなくても(回路設計やプログラミングをしなくても)、電気信号が入力される頻度や大きさによって、”電流の流れやすさ”をコントロールすることができます。

 

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シナプス素子(a)と脳内のシナプス(b)の比較図

 

どんなことに役立つの?

重要な情報は長いあいだ記憶して、不要な情報は短期間で忘れる”脳型コンピュータ”の開発に役立つそうです。

 

たとえば、将棋やチェスのように”長年の経験にもどついた判断力”が必要なゲームで、シナプス素子は”直感的な判断”を下すことができます。

 

記憶させたときの様子

実験では、2つの画像を時間の間隔をかえて10回ずつシナプス素子に記憶させました。

 

画像の各画素がシナプス素子1つに相当します。

今回使用した画像は7×7画素なので、計49個の素子が使われています。

 

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シナプス素子を用いた画像記憶の例

 

「1」の文字画像は短い間隔で、「2」は長い間隔をあけて学習させました。

 

結果、20秒後には「1」の文字がクッキリと残りました。

 

学習スパンが短いほどよく覚える

実験から、シナプス素子は人間の脳とおなじように”短期間で繰り返し学習したデータが記憶”されることが分かりました。

 

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シナプス素子の記憶モデル

 

情報を繰り返し入力する期間が短いほど、長期間記憶されます(赤い折れ線)。

また、電圧の大きさによっても記憶の保持量は変わってきます。

 

仕組み

どういう風に動いているの?

縦横50ナノメートルの2つの電極のあいだに1ナノメートルのすき間が空いています。

 

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シナプス素子(銀原子架橋)の様子

 

電極のあいだの電圧が変化すると、材料である硫化銀の内部から銀原子が出てきます。

 

出てきた”銀原子がすき間を埋めて電極間をつなげたり”、反対に、”元に戻っていってすき間ができたり”します。

 

電化製品に採用したら面白そうかも。よく使う機能ブロックの回路は強固に結合されて高速に動作したり、逆に使わない回路は電気的に弱まって消費電力が減って省エネになりそう。